セクシュアルハラスメントは、職場における男女の力関係や、女性を性的対象とみる風潮から生み出されるが、ストレスが嵩じた職場では、それまで男性が占めてきた領域に進入してきた女性に対する差別的ハラスメントが特に目立つ。成果主義処遇の広がりとともに、顧客の担当割りをめぐる嫌がらせや評価を既めるような風評の流布が職場におけるトラブルとして浮上してきた。ストレス発散の効果を狙って女性派遣社員をあてがう、といった意識も根強く、派遣社員はセクシュアルハラスメントのターゲットになってもいる。
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加害者は、「お客なのだから少しは我慢して」という商取引上の関係が、派遣労働者の立場を限りなく弱いものとしているその構造を逆手にとってくる。今日では許されなくなった「職場の花」「雰囲気をなごませる」などの差別的役割を、労働者派遣のなかに求めてくる。同じ仕事をしていて、職場に貢献する度合いも同しであっても賃金は正社員の三分の一という非正規雇用化による所得格差は、生涯賃金に換算すると一億七〇〇〇万円にのぼるといわれる。格差は所得だけではない。失業によって仕事を奪われたり、短時間のパートタイムによる働き口しかみつからなくなる一方で、リストラによる人員削減の穴埋めをさせられたり、低賃金だからこそ生きるためには細切れ雇用を複数の職場でつないで、信じられないほど長時間働かざるを得ない人もいる。働く人のなかで労働時間も明らかに二極化している。仕事と所得の格差を利用した労働者相互のダンピング競争が拡大したときには、この二極化はさらに深刻なものとなるだろう。そして、こうした格差が現実世界の力関係にも影響して、人権保障の度合いにも大きな格差が生じてくる。セクシュアルハラスメントの構造をみれば、そのことはよく理解できる。